ヒトブログ

人間の不思議とコーヒーと本と、雑記。

「リップヴァンウィンクルの花嫁」が教えてくれたのは、本当に大切にしたくなる人間関係(ネタバレなし)

こんばんは。

三日連続で化粧をしたまま眠ってしまい、その罪悪感が心の奥底にあったのか、同じく三日連続で悪夢を見続けたみゆです。

一説によると一晩化粧したまま寝ると一年分老けるとか。じゃあわたしはこの三日で三年分ふけるのか。軽々三十路超えていくわ。ジーザス。

 

少し前ですが、「リップヴァンウィンクルの花嫁」を観にいって、私界(狭ッ!)の映画史が塗り替わったのでこれはご紹介せずにいられないということで、今回は本のレビューではなく映画のレビューをいたします。

 

  • 「リップヴァンウィンクルの花嫁」のあらすじ

主人公の皆川七海(黒木華は学校の派遣教師。声が小さくて臆病な人。観ていて「あーもうじれったいな。はっきりしゃべれよ、内向オンナ!」なんてスクリーンに向かって毒づいてしまいそう。

彼女はSNSで出会った男性と付き合うことになり、そのまま結婚。でもあんまりハッピーではないんですよね。ネット通販みたいにポチって結婚相手を手に入れてしまうことのできる現代の人間関係の稀薄性に、もやっとした気持ちみたいなものを、七海自身が感じている。「彼氏を手に入れた。ネットで買い物をするようにあっさりと」なんて、SNSで匿名で呟くんです。

さらに親戚の少ない七海は、結婚相手の男から「いやいやそれはないでしょ」と半笑いで嫌味なんか言われてしまって、結婚式の参列者の数を増やすためにこれまたSNSで知った「何でも屋」の安室(綾野剛)に結婚式の代理出席サービスを依頼することになります。

なんとか結婚式は終えるんですが、早速旦那の浮気疑惑が浮上。浮気調査を安室に依頼しているうちに今度は逆に旦那の母親から浮気を疑われ、さらには結婚式の代理出席などの嘘も見破られ、離婚してしまいます。

行くあてのない七海は安室を頼り、安室はある仕事を七海に与えます。そこで出会ったのが女優業をしていると名乗る真白(Cocco)。奔放に、でも懸命に生きている真白と触れ合ううちに、七海自身気づかぬうちに影響を受けて変化していきます。

 

  • 「リップヴァンウィンクルの花嫁」がわたしに伝えたこと

事前情報として3時間の長編映画ということを聞いていたので、それはもう心してかかりました。わたしはコーヒー・お酒の利尿作用にめちゃめちゃ反応するからだを持ち合わせているので、観に行った日は朝から水分を口に含まず、大好きなコーヒーも我慢したんです。お蔭様で大事なシーンをトイレに立つことで見逃すアクシデントも起きませんでした。

観賞直後に押し寄せてきたのは、この作品に出会えたことへの感謝の気持ちでした。ストーリーが面白かったとかそういうことではなくて、シーンひとつひとつへの時間の取り方や映像の作り方に岩井俊二監督の強い意志を感じるんです。当方、映画素人ですが、それでもこんな感想を持つって不思議。観賞中も鳥肌が止まりませんでした。

SNSで人と出会えて、リアルな人間関係とは別にネット上の関係性があって……簡単に切ったり繋がったり、嘘をついたりできる。さらには皆自分自身を何役も「演じている」。それが現代の人間関係ですよね。

わたしで言えば家族・友人といるときの「●●(本名が入ります笑)」、職場での「係長」。ネット上だと、リアル友達と繋がっているFacebookとインスタグラムでは「●●(本名)」、匿名でやっているtwitterとこのブログでは「みゆ」。一人何役もこなして、複雑な人間関係をつくっているわたしたち。

それが良いとか悪いとかではなく現代にある事実として描き、それの対局にある他人とのリアルな繋がりの深みを紡ぎだしているのがこの作品かな。

人生の背景もわからないけれど心が深く結び付いた「他人」。

家族でも親戚でもないけど、それ以上に心が深く結び付いた「他人」。

長年確執があって音信不通だけど、心は深く結び付いていた「家族」。

どんな出会いでも、関係性でも、深くて濃ゆい人間関係は、人を成長させる。概要だけ考えると仄暗い作品のように思えるのですが、実は「幸せ」がずうっと横たわっていて、映画館を出たあとはしばらく余韻に浸りながらゆっくりなペースで散歩をしました。多分顔笑ってた(怖)

本当は好きなシーンベスト3とかやりたいけど、ネタバレになっちゃうから辞めておきます。全てのシーン、映像、コマから登場人物たちの感情を受け取る作業でした。もろい心を抱えながら幸せを感じている登場人物の姿が印象的です。

 

  • 「リップヴァンウィンクルの花嫁」は小説も読むべき

映画を観た後、完全に今まで見た映画の中で一番の作品となったので、小説も読みにかかりました。わたしはそもそも映像より文章派なので小説の映画化作品は「残念」と思うことが多いです。小説は行間に想いを馳せて自分で世界をつくることができるのに対して、映画は風景も表情も答えが見えてしまうから自分が脳内に繰り広げていたものと違うのは当たり前で、「残念」と思ってしまうのは仕方のないことです。

でも、今回に関していえば、小説も映画もよい!!でした。

小説には映画に盛り込みきれていなかった細かな設定が書かれていて、ストーリーに奥行きを与えてくれたし、改めて映画で表現されていた岩井監督の手腕による映像表現の凄さを実感。映画も観て、小説も読んで、そしてまた映画を観に行きたいと切望しております。